今回のフォトコンテストには多くの力作が寄せられ、審査は丹地 敏明先生にして頂きました。皆さんの卓越した腕前やプリントの良さも加わって審査は長時間に及びましたが、ここに発表となった結果となりました。素晴らしい作品の数々を是非ご覧下さい。
また、グランプリ・優秀作品には丹地先生の講評がありますので、ご参考として頂きましたら幸いです。
総評 久しぶりに美しいプリントを拝見でき、とても感激しました。応募者の皆さんのプリントに対する熱意が伝わってきました。またフィルムカメラよりもデジタルカメラの応募が全体の過半数を占めるようになりましたが、フィルムの入賞が多かったことはフィルムからのプリント力によるものではないかと感じました。四つ切プリントを一点ずつ総ての写真作品を拝見しながら撮影者の心を読んで行く作業はとても楽しいものでした。構図に拘り過ぎて感動が希薄になってしまったもの、演出方法に悩んだもの、デジタル処理を楽しんだものなど写真で感動する形も変わってきています。しかし、「素直な心」が写っている写真には鑑賞する側にも素直にその感動が伝わります。これからも発見した感動や状況を素直に記録することを優先して写真を楽しんで頂けたらと思います。そして、写真の感動が伝わるのはプリントすることにあると思います。プリントの写真作品を観ることを忘れてはならないと思います。デジタル化された映像を見るのではなく、プリントして初めて写真作品であるとも思います。今回の入賞作品はバラエティーに富んでいて、写真ならではの一瞬の感動が伝わり感激しました。この写真力(メッセージ)を来年も多くの皆さんから伝えて頂けたらと祈念しています。JPS会員丹地敏明 |
グランプリ該当者無し
この度、「あなたの“感動”」をつたえるフォトコンテスト2011の審査を終え、グランプリを始め各賞をこのホームページ上で発表しましたが、種々検討した結果グランプリ該当者なし、とさせて頂きました。審査をして頂いた丹地敏明先生から所感を頂いておりますので、以下掲載させて頂きます。
日本カラーラボ協会
日本カラーラボ協会から連絡があり、類似作品ではないかとの指摘がありましたので関係各位と協議の末、本年度の最優秀作品は該当者なしということに致しました。
応募規定にも記されているように「未発表作品に限ります。発表済みの類似作品は不可。」となっています。今回の写真を拝見すると全く同じ時に撮影したと思われる写真で完全に類似写真といわざるを得ません。同じときに撮影され違うカットだと思いますが4年前、別のコンテストで入賞しているという指摘があり判明した写真でした。心ない一人の応募者によって一つの賞がなくなるということは多くの応募者や関係者に大変な迷惑をかけた、ということことを理解しなければなりません。近年、写真撮影も同様にルールやマナーといった常識的なことが守られないケースが多く、応募においても応募者のモラルが問われます。今回のケースは僕自身も初めてのことでショックと憤りを覚え、非常に残念でなりません。
2011年12月8日 (社)日本写真家協会会員 丹地敏明
「阿波の女」
有地 三郎(大阪府)
「阿波の女」は代表的な真夏のお祭り、「踊る阿呆に見る阿呆、同じアホなら踊らなそんそん」と言われる阿波踊からの場面です。夏の蒸し蒸しする強い夕光に輝きにじむ汗の皮膚感がとても印象的で、女性美の一瞬を素直に的確に狙った作者の視点が素晴らしいと思いました。この写真作品もフィルム撮影で,背景のボケ味や黒の締まりが皮膚感と情景をサポートしており、フィルムによる美しさを引き出しています。ひと踊りした余韻が残る構成力が素晴らしく、感動の瞬間を瞬時に構成し魅力ある夏の女性像を伝えてくれました。
「夕刻」
松本 智行(東京都)
「夕刻」は、作者の心が写っているように感じました。プラットホームに人が居ないこと、後続電車がすぐ後ろにいること、望遠レンズでプラットホームと電車を圧縮したこと、夕陽の色彩が強烈なことなどが一体化して不思議な感動を覚える心象的な印象に魅力を感じました。只ひとつ気になったことはプラットホームと電車との距離感が危険な撮影ポジションではないかということでした。プラットホームが曲がっていて、安全なポジションからの撮影と解釈しました。写真愛好家の皆さん、撮影不可の場所ではマナーとルールを厳守してください。
「歓喜」
久野 敦之(愛知県)
感動的なシーンの瞬間を写し止めている所にドラマを感じます。勝ってホームベース辺りで喜びあった後、応援団のところへ向かう球児たちの感動が伝わり、また一連の流れを想像できます。グランドに描かれたラインと球児たちの位置、そして群像は静止しているけれどそのバランスによってスピード感ある動きが感じられます。そして色調も印象的で、土の色とユニホームが汚れた選手、茶色と白の統一感ある色彩が写真作品をシンボリックにしています。作者の感性がなせる感覚だと思います。
「すこし、恐い。」
椿 清(神奈川県)
「すこし、恐い。」は、幼児の手の形に現れています。作者はその一瞬を逃さず伝えています。またキリンさんの首の曲がり具合とフェンスの曲線がマッチし、幼児とキリンさんの動きに優しさを感じます。だから「すこし、恐い。」んですね。キリンさんにあげた葉っぱが黒い背景に浮き上がっている所も効果的です。こうして見ていると、瞬間を写し止めることの大切さを非常に感じます。そして予測して撮ることの大切さも重要で、この写真作品も予測して撮影されたことと思います。それが写真の魅力であり、また個性的な写真作品が撮影できる要因だと思います。
「光彩の河」
亀卦川 利幸(神奈川県)
「光彩の河」は、水面の模様に感動した作者の瞬間的な発見と素早い撮影に感心しました。写真撮影はじっくり待って撮影する方法と感じた瞬間に素早く撮影する方法がありますが、デジタルカメラによる素早い作者のカメラ操作と印象的な感性に感服です。常に有機的注意を持って歩いていなければ発見はありません。作者は気づかないような所に反応して何時も撮影していると思われます。これからも、自分らしさを失わない感覚を大切にしながら写真を楽しんでください。この写真作品はデジタルカメラの特徴を発揮した写真作品と言えます。