今回のフォトコンテストには多くの力作が寄せられ、審査は丹地 敏明先生にして頂きました。皆さんの卓越した腕前やプリントの良さも加わって審査は長時間に及びましたが、ここに発表となった結果となりました。素晴らしい作品の数々を是非ご覧下さい。
また、グランプリ・優秀作品には丹地先生の講評がありますので、ご参考として頂きましたら幸いです。
総評 総ての写真作品を拝見して感じたのは、皆さん素直に感動されていることが分かりました。現場では相当な感動に包まれていると想像できます。夢に見た場所ヘ行った感動、自然現象の感動、街で見かけた出会いの感動など数多くありました。注意して頂きたいことは、多くが構図優先で撮影されることで感動が希薄になってしまわないかということです。構図は、感動した心を明確にするための方法論であって、最初から構図にあてはめて撮影することは避けたいと思います。したがって、一枚の写真に自分の感動はこれだというところを伝える様々な方法論を自分で確立し、撮影時に現場で楽しみながら少し考え、自分らしい表現でその感動を写真に定着してほしいと思いました。最初に申し上げた通り、写真撮影は心が動く何かがあるからシャッターを押す訳で、その心の動きを伝えるという方法を今一度熟考してほしいと思いました。例えば、撮影したあと2Lまたは六つ切りにプリントし、感動したところは何処だろうと突き詰め、さらには伝えるためのトリミングを考えてみることも大切です。そうすることで伝えたいことも大きく変化すると思います。今回の入賞作はひとり一人の感動がメッセージとして伝わる写真作品になっていると思います。JPS会員丹地敏明 |
「川面に!!」
早川 和子(神奈川県)
多くのスカイツリーの写真作品が応募されましたが、一番感動的で印象的だったのがこの写真作品でした。多分十間橋からだと思いますが、五月晴れの中にその影を映したスカイツリーの部分とさざ波立つ水面に水鳥一羽、揺らぎの少ない手前の水面には五月晴れと白い雲が流れる雰囲気。さらにツツジの花びらが水面に散り初夏の雰囲気が漂う感じが本当に爽やかで、作者が伝えたかった感動を感じました。画面の外を想像させるテクニックが素晴らしいと思いました。
「七色の輝き」
田中 五男(群馬県)
冬の季節を右下の氷で表現し、さらに太陽が低い位置にある冬ならではの自然現象を的確な撮影技術で印象的に表現しています。特に、絞り値を開け気味にし、七色の輝きを効果的に見せているところが素晴らしいと思いました。このモチーフはまだまだ何かが出来そうな予感があります。観察を続け、また違う発想でこの冬も挑戦してください。
「紫いっぱいの季節」
鈴木 奈菜(神奈川県)
ひたち海浜公園の名物であるネモフィラの写真作品は数多く拝見していますが、枯れ木に花を咲かせたアイデアの写真作品を拝見した時は感動しました。自分流の発見と発想が素晴らしいこと、好天に恵まれたことなどの条件を見事に備えた素晴らしい写真作品です。この写真作品から多くのことを学んでほしいと思います。
「ご神樹」
向田 壽美子(神奈川県)
鎌倉の鶴岡八幡宮の大銀杏が倒れたニュースは周知の事件です。しかし、その生命力に感動した作者の気持ちが、大銀杏に芽生えた緑の新芽と建物や巫女さんなどの背景の雰囲気とで印象的に表現できていると思います。雨に濡れてしっとりした色彩が荘厳な境内を印象的にしており、またピントがメインの大銀杏にぴたりと決まり、背景をボカしているところが良いと思いました。
「勝利の瞬間」
中村 勝巳(大阪府)
写真の記録性がよく表現されています。コンパクトカメラで甲子園球場の一番感動的な雰囲気を素直に伝えています。風船の音が聞こえてきそうな感覚があり、写真力を感じます。こうした日常の中でも写真表現ができる、という見本のような写真作品です。コンパクトカメラを何時も携帯して感じたら撮影しておくことは非常に重要なことです。
「打ちみず」
真本 勝範(東京都)
2010年は真夏日の記録が70日以上も続きました。浴衣に下駄の女性たちが打ち水をする風景を、見ている人も濡れてしまいそうな感覚に見せる撮影方法が秀逸です。桶も丸桶ではなく六角形が珍しく、打ち水をした女性たちの笑顔が打ち水の間にうまく収まり、作者の感動的な瞬間をきれいに写し留めたところが良いと思います。